子供の頭痛・片頭痛は珍しくない|小学生・中学生の症状、原因、学校生活と治療

「子どもなのに頭痛?」と思われるかもしれません。しかし、子どもや思春期の頭痛・片頭痛は決して珍しくありません。学校を休む、朝起きられない、吐く、腹痛やめまいを訴えるなど、頭痛以外の症状として現れることもあります。
まず、筆者は小学校高学年頃より頭痛がありました。
乗り物酔い・肩こりが強く、大きな音を聞いた後や泣いた後、飛行機の離着陸時などに強い頭痛がでる傾向にありました。思春期~20歳台には悪化し、常に鎮痛薬をもっていました。
予防療法を開始してからは徐々に落ち着き、「頭が痛くなったらどうしよう・・・」と考えずに生活できるようになりました。(現在も乗り物酔い、テレビの音を小さくしたがる、寝過ぎると頭痛、肩こりなどは健在。環境を調整しうまく付き合っています。)
しかしここに至るまでに頭痛によって損失した体験や時間は計り知れません。
頭痛はありふれた症状の一つであり、その場しのぎの投薬になりがちです。
しかし、当院では、「進行し、慢性化しうる疾患である」と認識し治療を行うことで、つらい思いをすることが少しでも減るように、との思いでどのように症状に付き合っていくかを一緒に考え、治療をご提案させていただいています。
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1.子どもの頭痛は珍しくありません
8~18歳を対象にした2023年の系統的レビュー・メタ解析では、片頭痛の有病率は約11%、緊張型頭痛は約17%、一次性頭痛全体では62%でした。ただし、研究間のばらつきは大きく、地域や診断方法によって数字は異なります。(The Journal of Headache and Pain、2023年、48研究)
日本の学校を対象にした研究では、6~17歳の頭痛全体は36.44%、片頭痛は9.48%でした。これは一地域の調査であり、日本全国の子どもにそのまま当てはめることはできませんが、子どもの頭痛が非常に身近な問題であることを示しています。
この9.48%を単純に学級へ換算すると、30人学級では約3人、40人学級では約4人に相当します。
*実際のクラスに必ず同じ人数がいるという意味ではありません。
日本の別の学校調査では、頭痛全体は小学校低学年で29.1%、小学4年生から中学3年生で37.6%でした。
片頭痛は年齢とともに増える傾向があります。海外の小児ガイドラインでは、片頭痛の有病率は3~7歳で1~3%、7~11歳で4~11%、15歳頃には8~23%とされています。
男女差は年齢で変化します。思春期前は男児と女児で大きな差がないことが多い一方、10歳頃から女児で増え始め、思春期以降は女児に多くなります。月経、睡眠、ストレスなどの変化も関係すると考えられています。
2.子どもにはどんな頭痛がある?
頭痛には、頭痛そのものが病気である一次性頭痛と、別の病気に伴って起こる二次性頭痛があります。
一次性頭痛には、主に次のものがあります。
片頭痛:吐き気、嘔吐、光や音がつらいなどを伴うことがあります。
緊張型頭痛:頭を締め付けられるような痛みで、肩や首のこりを伴うことがあります。
慢性連日性頭痛:月15日以上など、高い頻度で頭痛が続く状態を包括的に表す言葉です。単一の病名ではなく、慢性片頭痛、慢性緊張型頭痛、新規発症持続性連日性頭痛などが含まれます。
二次性頭痛には、感染症、頭部外傷、目や耳の病気、脱水、貧血など、さまざまな原因があります。頻度だけで良性・危険性を判断するのではなく、症状の経過と診察を組み合わせて評価します。
3.子どもの片頭痛は大人と少し違います
子どもの片頭痛は、大人の典型的なイメージと異なることがあります。
痛みが両側に出ることがある
おでこから側頭部が痛むことが多い
発作時間が大人より短いことがある
吐き気や嘔吐が目立つ
光や音を嫌がる
暗い部屋で眠ると楽になる
「ズキズキする」「光がまぶしい」と言葉で説明できないことがある
幼い子どもでは、頭痛を訴える代わりに、顔色が悪い、動かなくなる、横になりたがる、機嫌が悪くなるといった行動で示す場合があります。片側が痛くなければ片頭痛ではない、子どもは片頭痛にならない、という理解は正しくありません。
4.頭痛より先に現れることもある病気
国際頭痛分類では、片頭痛と関連する可能性のある小児の発作性症候群として、次の病態が知られています。これらがあるからといって、将来必ず片頭痛になるわけではありません。
周期性嘔吐症候群(CVS):同じような激しい吐き気・嘔吐を繰り返し、発作の間は元気になる病気です。小児では有病率1.9~2.3%との報告があり、思春期に片頭痛へ移行することがあります(約40~70%で片頭痛を合併)。
腹部片頭痛:頭痛よりも、へその周囲などの強い腹痛、吐き気、嘔吐、顔色不良が中心となる発作です。発作の間は正常に戻ります。
小児良性発作性めまい:突然、数分から数時間のめまいが起こり、発作の間は比較的正常です。以前は「良性発作性めまい(BPVC)」と呼ばれ、現在も片頭痛関連の小児症候群として扱われます。
良性発作性斜頸:乳幼児に、首が傾く発作を繰り返す病気です。嘔吐、顔色不良、ふらつきを伴うことがあります。
周期性嘔吐症候群や良性発作性斜頸の経過を調べた研究では、後に頭痛を経験した子どもが多かったと報告されていますが、これは関連を示すものであり、すべての子どもに片頭痛が起こるというではわけありません。
乗り物酔いをしやすい子どもに片頭痛がみられることも多いです。
5.頭痛と起立性調節障害(OD)・体位性頻脈症候群(POTS)
**起立性調節障害(OD)**は、立ち上がったり立ち続けたりしたときに、脳や全身への血流調整がうまくいかず、朝起きられない、立ちくらみ、動悸、吐き気、倦怠感、頭痛などが起こる状態です。
**体位性頻脈症候群(POTS)**は、立位で脈拍が過度に増え、動悸、ふらつき、疲労、頭痛などが続く病態です。小児の片頭痛では、起立不耐症(立っている姿勢がつらい状態)を併存することがあります。
片頭痛、OD、POTSは同時にみられることもありますが、それぞれ評価と治療が必要です。起立時の症状が強い場合は、横になったときとの違い、脈拍や血圧の変化を確認します。
6.生活習慣と子どもの頭痛
睡眠不足、休日と平日の睡眠時間の差、朝食欠食、水分不足、運動不足、長時間の画面使用、過密な予定、カフェインなどは、頭痛を起こしやすくしたり、発作を悪化させたりすることがあります。睡眠障害、運動不足、長いスクリーンタイムが頭痛と関連した学校調査もあります。
ただし、頭痛は「生活習慣が悪いから起こる」のではありません。片頭痛には遺伝的素因や神経の過敏性があり、生活習慣は多くの場合、発作の誘因や増悪因子の一部です。スマートフォンを完全にやめれば治る、という単純な問題ではありません。
まずは、睡眠、食事、水分、画面時間、運動、頭痛が起きた場面を記録し、本人を責めずに調整できるところから始めます。
7.ストレス・学校生活・心の健康との関係
試験、部活動、人間関係、学校での緊張、不安、抑うつ、不登校などは、頭痛と関連することがあります。しかし、「学校に行きたくないから頭が痛い」「頭痛は気持ちの問題」と決めつけてはいけません。
痛みが続くことで不安が強くなり、不安や睡眠の乱れによってさらに頭痛が悪化するという、双方向の関係があります。特に、片頭痛のお子さまは、真面目で頑張りすぎる性格や、環境の変化に敏感であるなど、不安や緊張・気分の落ち込みが頭痛の引き金となることも多いです。
頭痛で遅刻や欠席が増えている場合は、本人の訴えを尊重し、小児科や、必要に応じて児童精神科・心療内科、心理士、学校や養護教諭と連携が必要となることがあります。
親御さんはやはり、お子さまの訴えをしっかり症状として受け止めてあげることが重要です。
「気のせいでは?」「さぼりたいだけでは?」と決めつけず、必ず本物の症状として、とらえてあげてください。
叱るより、
✓困りごとを一緒に整理する
✓上手な休み方を一緒に考える
✓好きなことやリラックスする時間をもつ
方がお子さまの安心につながります!
8.子どもでも薬の使いすぎによる頭痛になる?
薬剤の使用過多による頭痛(MOH)は、子どもや思春期でも起こり得ます。国際頭痛分類では、もともと頭痛がある人に、3か月を超えて薬を使い続け、月15日以上の頭痛が生じることが基本条件です。単純鎮痛薬は月15日以上、トリプタンや複合鎮痛薬は月10日以上が目安です。
一方、小児での研究は成人ほど多くなく、成人の基準を機械的に当てはめるのではなく、頭痛日数、服薬日数、学校生活への影響を一緒に確認します。小児ガイドラインでは、アセトアミノフェンやイブプロフェンは月14日以内、トリプタンは月9日以内を目安として説明することが推奨されています。
だからといって、「痛み止めを飲ませてはいけない」という意味ではありません。発作の早い段階で適切に治療することと、頻回使用を避けて予防治療を検討することが大切です。
9.発作時の治療
子どもの片頭痛では、一般にアセトアミノフェンやイブプロフェンなどが第一選択となります。海外の国際ガイドラインでは、アセトアミノフェン15mg/kg、イブプロフェン10mg/kgが例示されています。
発作が始まったら、痛みが強くなる前に、静かな暗い場所で休み、早めに処方薬を使用することが大切です。吐き気や嘔吐が強い場合は、吐き気止めを検討します。
トリプタンは、子どもだからすべて使用できないわけではありませんが、年齢と剤形によってエビデンスと承認状況が異なります。
当院でも年齢や体重、そのほかのお薬への感受性や吐き気の有無などをお伺いし、トリプタン製剤を試していただくこともあります。
*医薬品情報
アセトアミノフェン、イブプロフェン、スマトリプタンはいずれも、肝臓・腎臓の病気、脱水、喘息、心血管疾患、併用薬などで使用できない場合があります。スマトリプタンの薬剤情報では、小児の安全性・有効性は確立していないとされ、適応、年齢、剤形を個別に確認する必要があります。
10.予防治療はどんなときに考える?
次のような場合は、予防治療を検討します。
✓発作が頻繁に起こる
✓学校を休む、早退する
✓部活動や友人との活動が制限される
✓急性期治療が十分に効かない
✓吐き気や嘔吐が強い
✓急性期治療薬の使用日数が多い
予防薬には、プロプラノロール、トピラマート、アミトリプチリン、ロメリジンなどが候補となることがあります。小児の研究ではプラセボでも改善する子どもが多く、薬の効果は一律ではありません。
バルプロ酸は、妊娠可能年齢の女性では胎児への影響に注意が必要であり、予防薬として安易に選択しません。トピラマートは認知機能、体重、視覚、脱水などを確認します。アミトリプチリンは眠気、口渇、動悸、気分の変化などを確認します。
11.何歳から大人と同じ治療ができる?
「何歳になれば大人と同じ治療」という境目はありません。小児期、思春期、高校生年代では、体重だけでなく、症状、併存疾患、剤形、安全性データ、国内承認の有無を考慮して選択します。
体重が成人と同じでも、成人と同じ薬や用量を使用できるとは限りません。反対に、思春期では、症状や剤形によって成人に近い治療を検討できる場合もあります。
12.高校生年代とCGRP関連製剤
カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を標的とする製剤には、ガルカネズマブ、フレマネズマブ、エレヌマブ、経口薬のリメゲパントやアトゲパントがあります。
2026年時点では、フレマネズマブ(アジョビ)について6~17歳を対象にした無作為化試験が報告され、月間片頭痛日数はフレマネズマブ群で2.5日、プラセボ群で1.4日減少し、50%以上改善した割合は47.2%対27.0%でした。Hershey et al.の無作為化比較試験(New England Journal of Medicine、2026年、234人)では、6~17歳の反復性片頭痛でフレマネズマブの有効性がプラセボを上回りました。
ただし、これは臨床試験の結果であり、小児への承認を意味しません。
日本の15~17歳を対象にした小規模な実臨床研究では、CGRP抗体薬を使用した34人中、10~14週で頭痛による生活への影響が改善した割合は68.3%でした。
しかし、対照群のない後ろ向き研究であり、効果をすべての高校生に当てはめることはできません。
ガルカネズマブ、フレマネズマブ、エレヌマブの薬剤情報では、成人用量が記載され、小児の安全性・有効性は確立していません。リメゲパントとアトゲパントも、確認できる薬剤情報上は成人適応です。
当院でも、患者さんそれぞれの治療経過や症状の状態・ライフスタイルに応じて、お薬の適応をしっかり話し合い、検討するようにしております。
13.こんな頭痛は早めに受診してください
次の症状がある場合は、早めの受診、または救急受診を考えます。
✓突然始まった、今までにない激しい頭痛
✓数日から数週間で急速に悪化する頭痛
✓発熱、首の硬さ、意識がぼんやりする
✓けいれん、手足の麻痺、ろれつが回らない、歩けない
✓頭部外傷後に続く頭痛や嘔吐
✓朝方に繰り返す嘔吐、視力の異常、意識の変化
✓眠っている子どもを起こすほどの頭痛
✓体重減少、強い倦怠感、性格や行動の急な変化
症状により、MRI検査や血液検査、救急病院の受診をおすすめさせていただく場合もございます。
14.まとめ
子どもの頭痛や片頭痛は決して珍しくありません。頭痛で学校生活や日常生活が妨げられているなら、無理に我慢させる必要はありません。
子どもでは、頭痛だけでなく、腹痛、嘔吐、めまい、朝起きられない、立ちくらみなどとして現れることがあります。生活習慣、学校生活、心理面、起立時の症状を含めて総合的に考えることが重要です。
年齢や症状に応じて使用できる治療法があり、適切な診断と治療によって、学校生活や日常生活への支障を減らすことを目指しましょう。
筆者も小児期より頭痛を経験してきました。「こんなときどうしていましたか?」などのご相談もお受けしていますので、お気軽にお尋ねください。
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参考文献
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脳神経外科・内科医師
森高 千尋MORITAKA CHIHIRO
森高クリニック 副院長
久留米大学医学部医学科卒業後、国立病院機構九州医療センターにて初期研修。久留米大学医学部脳神経外科学講座、福岡済生会総合病院、福岡和白病院等にて脳神経外科医としての研鑽を積む。脳神経外科専門医・脳卒中専門医・頭痛専門医として、片頭痛をはじめとする頭痛疾患や脳卒中の診断・治療に従事。令和8年より森高クリニック副院長に就任。
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